整形外科
整形外科で取り扱うのは手足、背骨からの原因で起こる症状(痛み、しびれ、筋力低下、動きの固さ、不安定感など)です。
関節、骨、脊椎、末梢神経、筋肉などの疾患から、すり傷、切り傷、骨折、脱臼、捻挫などのケガまで幅広く診療しています。
病院にかかろうと思っても、どの科を受診していいか迷っている方も多いかと思います。
以下のような症状がある方は、整形外科に相談してみてください
肩
肩を挙げる時の痛み、寝ているときの肩の痛み
【症状・病態】
肩周りに痛みや動かしにくさがあらわれる事です。
50歳代を中心とした中年以降に多くみられる事から四十肩や五十肩などとも言われますが、医学的には肩関節周囲炎と言います。
肩関節周囲炎はあくまで1つの疾患ではなく肩関節に痛みが生じる疾患の総称です。
痛みは大きく3つの種類に分類されます。
- 安静時痛→安静にしていても出る痛み
例)椅子に座っているだけでも肩が痛む、うずく
- 動作時痛→肩を動かすと出る痛み
例)肩を上げると痛みが出る、着替えが痛くて出来ない
- 夜間時痛→夜間時、睡眠時に出る痛み
例)痛くて寝付けない、痛みで目が覚める
【原因】
明らかな原因は不明ですが、肩関節を構成する骨、軟骨、腱、靭帯、関節を包む袋(関節包)に炎症が起こる事で痛みが出現します。老化などの姿勢の変化や仕事、趣味、普段の生活などの繰り返し行う動作で肩に負担や刺激がかかるのが原因と言われています。また運動不足や血液循環の悪化等も原因の一つだと言われています。
【検査】
痛みの部位や状態、肩の動きをみて診断します。肩腱板損傷や断裂、石灰沈着性腱板炎などもあり主にレントゲンやMRI、エコーなどの検査で区別します。
【治療】
まずは薬や日常生活の指導で痛みを減らして炎症を抑えていきます。痛みが減らない場合は注射をすることもあります。炎症がおさまったらセラピストが痛みに合わせて関節を動かす練習をしていきます。また姿勢が原因に影響している事が多く、姿勢改善による再発予防を目的としたセルフストレッチやトレーニングをお伝えします。これらの治療でも改善がみられない場合は手術を検討します。
自然に痛みがなくなる事もありますが、痛みを避け動かさないようにしていると関節が固まって動かなくなってしまうこともある為、予防で肩周りの血液の循環を良くする為に温めたり適度に動かす事も大切です。運動やストレッチは大切ですが、痛みが強い場合には無理に動かさず受診をお勧めします。
【症状・病態】
腱板とは肩のインナーマッスルとも呼ばれ、肩甲骨と腕の骨(上腕骨)をつなぐ、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋という4つの筋肉から成ります。これらの筋肉は肩を円滑に動かし、安定させるために重要な役割を果たしています。腱板損傷が起こると、これらの機能が上手く働かず肩を動かすのに支障が生じ、痛みを伴います。肩関節周囲炎(四十肩)と違うところは、肩関節の硬さが少ない、腕を挙げる時に力が入りにくい点です。稀に肩の前上面でジョリジョリという音がすることもあります。
【原因】
腱板が傷付く原因としては、転倒や転落、重たい物を持つなど、肩へ急激な負荷が生じるもの(外傷性)と、加齢による変化で徐々に腱板がすり減って切れてしまうもの(変性)があります。変性によるものは日常生活の繰り返しの動作で腱板が傷付いてしまいます。
【検査】
徒手検査・レントゲン・エコーで診断します。必要に応じてMRI検査をすることがあります。
【治療】
損傷の度合いが軽い場合は保存療法で対応します。薬の服用で痛みを和らげ、強い痛みに対しては関節注射を行うことがあります。薬や注射で痛みが軽減したら、リハビリでストレッチを行い、肩関節が硬くならないように予防をします。また損傷せずに残っている腱板の筋力トレーニングを行い、機能改善を目指します。
保存療法で肩の痛みや動きが改善しない場合は、手術を行うこともあります。
思春期のボールを投げる時の肩の痛み
手をついた後より急に肩が痛くなり、動かなくなった
股関節(足の付け根)
徐々に股関節が痛くなってきた
- 変形性股関節症
- 大腿骨頭壊死症
- 石灰沈着性股関節炎
3~10歳くらいの子どもが急に股関節または膝を痛がり歩かなくなった
転倒後より股関節が痛くなった
赤ちゃんの検診で股関節の異常を指摘された
膝関節
徐々に膝が痛くなってきた、特に立ち上がりで痛い、膝が腫れている
【症状・病態】
症状としては脛骨粗面(膝のお皿の下の骨)が徐々に突き出して痛みが出ます。また、赤く腫れたり熱をもつこともあります。10〜15歳の成長期に起こりやすく、男女比では男子に多いことが特徴です。
膝を押さえた時や、ボールを蹴る・ジャンプ・膝の曲げ伸ばしなどの運動時に痛みが増します。運動を休むことで痛みが緩和されることが多く、無理に継続すると症状が悪化します。
【原因】
大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)は膝の曲げ伸ばしをする際に大事な役割を担っています。その大腿四頭筋の使いすぎや柔軟性の低下に加え骨の急激な成長が起こると、筋肉が付着している脛骨粗面を引っ張ってしまい骨の突き出しを招きます。
【検査】
診察での所見、レントゲン、エコーを用いて検査します。
【治療】
成長期が終わると多くは治癒するため保存療法が基本となります。
痛みが出ている場合は、運動を控えることが大切です。また脛骨粗面を刺激する正座などの動作も控える必要があります。症状を悪化させないようにレーザー治療、膝関節周囲のリラクゼーションやストレッチ、筋力トレーニングなどのリハビリを行います。痛みが強い場合には内服や湿布を処方することも可能です。
発症後3〜6ヶ月は運動をすると症状が強くなりやすいため、無理な運動は控えるように心がけ、運動をする際は運動の前後にストレッチを行い、テーピングやサポーターの使用をお勧めします。
スポーツ時に膝を捻った後の膝痛
膝のお皿を強打した後より歩行困難になった
膝を曲げた後よりお皿の骨がずれて、膝を伸ばせなくなった
足首~足先
足首を捻った
徐々に足首の痛みが出て腫れもある
急に足首が痛くなって動かせなくなり、また全く痛くなるということを繰り返す
足首~足先のどこかの関節(特に足の親指の付け根)に急に激痛がでて赤く腫れる
足の親指が外側(小指側)に向いて変形してきている
頚部
首から背中、肩に痛み(肩こり)があり、良かったり悪かったりを繰り返している
首の痛みと腕~手に続く痛みしびれがある
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 頚椎症性神経根症
- 頚椎症性脊髄症
腰背部
急に腰痛が出て動けなくなった
【症状・病態】
一般的には、1番下の肋骨からお尻までの間に起きる痛みのことを腰痛と言います。
その症状のうち、発症して4週未満のものを急性腰痛と言います。
よく知られているものであれば、ぎっくり腰がこの中に含まれます。
筋肉や椎間板、椎間関節、仙腸関節に炎症が起きていると考えられていますが、画像検査で写らないこともあり、実際には完全には原因が解明されていません。
椎間関節由来の痛みがあるぎっくり腰は海外では魔女の一撃(witch’s shot)と言われるほど激しい痛みがあります。
【原因】
重たい物を持ち上げたり、腰を捻ったり、仕事で腰に負担をかけた際に起こるが多いですが、何もしなくても起きることもあります。
【検査】
診察、腰椎レントゲン、腰椎MRIなどで、腰椎に異常がないか調べます。また、骨、椎間関節、椎間板の評価を行います。
他の原因が隠れていないかさらに詳しい検査をすることもあります。
【治療】
治療としては消炎鎮痛薬の処方や神経ブロックなどがあります。
痛みが強い場合には安静としますが、必要以上な安静は逆効果です。
安静よりも活動維持をすることが大切であるため、痛みがない範囲での早期の活動再開を推奨します。通常では1カ月以内に痛みが軽快するものが多いです。
また、痛みが落ち着いてきたら、筋肉の硬さをほぐすことを目的にリハビリテーションを開始していきます。
腰部~臀部~太ももの裏の痛みしびれ(ふくらはぎまで続くこともあり)
【症状・病態】
背骨と背骨の間には、クッションの役割を持つ椎間板があります。この椎間板が飛び出す事で神経を圧迫・刺激し症状をだします。
腰の神経を圧迫するため、圧迫を受けている場所で異なる腰・お尻・太ももやふくらはぎのしびれや痛み、麻痺症状を生じます。
前屈みになることで症状が増悪することが多く、場合によっては排便困難・排尿困難(膀胱直腸障害)を起こすことがあります。
【原因】
腰部に負担をかけやすい姿勢や動作、加齢・喫煙・遺伝的要因が原因になると言われています。
【検査】
診察時の所見、レントゲン画像、CT、MRIを用い総合的に判断します。
【治療】
基本的にはヘルニアになった人は自然に症状が軽快することが多い為、保存療法が主体になります。
保存療法では、初期に消炎鎮痛薬や神経の痛みを抑える薬を服薬しつつ、コルセットを装着して安静を促します。痛みが強い場合には、ブロック注射を行います。
また、日常生活が送れないほどの痛みが続いたり、明らかな下肢の麻痺や排尿・排便障害を認める場合には手術療法が選択される事があります。
長く歩いていると臀部~ふともも、ふくらはぎがしびれて途中で座って休憩してしまう、休憩するとまた歩けるようになる
【症状・病態】
症状としては歩いているとお尻~太もも、ふくらはぎのあたりに痛みやしびれ脱力が起きます。長時間歩くと、これらの症状が出現し座って休憩するとすぐ軽快するというのが代表的な症状です。そして体を反ると症状がひどくなる場合が多いです。歩いている時に下半身に痛みが出た場合は、その場で腰を丸めて休憩すると軽快する場合が多いので試してみてください。症状が酷い場合、排尿・排便困難などの膀胱直腸の症状が出ることもあります。
【原因】
加齢による背骨の変形により、神経の通る管が狭くなって神経を圧迫し神経症状が出現します。外傷性のものや先天性で生まれつき狭窄症になりやすい場合もあるので原因は様々です。
【検査】
診察での所見、X線、CT、MRIを用いて検査します。
【治療】
治療としてはお薬の処方、ブロック注射やリハビリでの筋力強化や生活指導等を行います。症状が酷く膀胱直腸の症状がある場合は手術が必要な場合が多いです。
尻もちをついたあと(もしくは腰に負担がかかることをしたあと)に、寝返り起き上がりのときの腰痛がある
【症状・病態】
背骨に圧力がかかることで、背骨が変形したり潰れて骨折した状態です。
主な症状としては、寝返り時の痛み、起き上がり時の痛み、体を動かした時の痛みがあります。初期では安静にしている時や歩く時は比較的痛みを感じにくいため、すぐに気が付かないことも少なくありません。
【原因】
大きく分けて2つの原因があります。
1つ目は、骨粗鬆症等により骨密度が低下していることです。その場合、”尻もちをついた”、”重いものを持った”など、腰に負荷がかかることで骨折してしまいます。
2つ目は、交通事故や転落事故などの強い外力が加わった外傷です。
【検査】
レントゲン検査、診察にて評価します。必要に応じてMRI検査や、骨粗鬆症が原因と疑われる場合は骨密度検査を行うこともあります。
【治療】
患者様お一人お一人に合わせてコルセットを作成します。
また、痛みが強い場合は消炎鎮痛薬を処方します。
背骨がゆがんでいる、学校検診で背骨の異常を指摘された
肘
物を持ち上げる時に肘の外側が痛い
野球をしている小学生~高校生の肘の痛み
肘の曲げ伸ばしが固い
子どもが手を引っ張られた後などに、痛がって腕を下げたまま動かさなくなった
【症状・病態】
6歳くらいまでの子どもが腕を引っ張られたり、1歳未満の子どもの寝返りの際に受傷することが多いとされています。肘が腫れたり皮下出血をすることはないですが、痛がって腕を動かさなくなります。
【原因】
肘から手首にかけては2本の骨があり、親指側の骨を橈骨(とうこつ)、小指側の骨を尺骨(しゃっこつ)といいます。尺骨から輪状靱帯という靱帯がでており、橈骨の頭を輪ゴムのように繋いでいます。この輪状靱帯がなんらかの影響で橈骨頭からずれるによって起こります。
小さい子どもの関節は成長途中であり、軽い力が加わっただけでも靭帯がずれやすくなってしまいます。
【検査】
問診上・身体所見から判断することが多いですが、骨折との識別のためにレントゲン撮影することもあります。
【治療】
徒手整復術といってずれている輪状靱帯を元にもどします。整復術にはいくつか種類がありますが、当院では主に過回内法という手技で整復をします。
麻酔薬や手術は不要、整復後は固定も不要です。肘内障を疑った際はご自身で無理に動かさずに受診をお願いします。
手首
手首の小指側が痛い(特にドアノブ動作で)
【症状・病態】
手首の小指側が痛みます。
手をついたり、手首をひねる動作、特に「ペットボトルのキャップを開ける」「ふきんを絞る」「ドアノブを回す」「子どもをだっこする」などの動作で痛みが出ることが多いですが、何もしていない時も痛む場合もあります。
【原因】
手首の小指側にある靭帯や腱、骨の周りにある軟骨などの軟部組織のまとまりのことをTFCC(三角線維軟骨複合体)といいます。
このTFCCがダメージを受けると、炎症が起きたり部分的に損傷したりすることで痛みがでます。
ダメージの原因として、スポーツや仕事で手首に負担がかかる動作を繰り返す、転んで手をつく、交通事故で手首に強い力がかかるなどがあります。また、思い当たる要因がなくてもTFCC損傷を起こす場合があります。
さらに、『尺骨突き上げ症候群』と呼ばれる状態になっている方もTFCC損傷の原因となります。
【検査】
レントゲン写真で手首の骨の状態をみます。
さらに詳しい画像検査が必要な場合にはMRI 撮影をします。
【治療】
まずは症状が落ち着くまで安静にすることが大切です。
この場合は手首を固定できるサポーターをつけていただくことがほとんどですが、当院では患者様の症状や生活スタイルによって、作業療法士が患者様それぞれの手首の形に合わせて固定用の装具を作ることが可能です。
サポーターや装具で安静を保ちつつ、痛みの強さに合わせて消炎鎮痛薬や炎症を抑える注射を使いながら経過をみていきます。
一定期間安静にしても症状が良くならない場合や、痛みが強く日常生活に支障が出てしまう場合には手術も選択肢の一つに挙がります。
手術を希望された方は、手術可能な病院で院長が手術をすることも可能です。
【症状・病態】
外傷によってまたは外傷がないのに、『手を着くと小指側の手首が痛い』『ドアノブを回す動作や雑巾を絞る動作をすると痛い』といった小指側の手首の痛みが主症状です。
手首の骨と腕の骨がぶつかる事で骨の表面を覆う軟骨を痛めたり、関節に炎症が起こります。
【原因】
手根骨(手の甲の骨)と尺骨(腕の骨)がぶつかる事で痛みが出ます。
通常は腕にある2本の骨(橈骨・尺骨)は手首の位置で同じ長さになっているのですが、生まれつきや外傷による影響で小指側の骨(尺骨)が少し長くなる場合があります。その為、手首にある骨とぶつかってしまい痛みが出現します。
【検査・診断】
主にレントゲン検査で腕の骨(橈骨・尺骨)と手首の骨のバランスを確認します。また手首を動かして痛みを誘発する検査(ストレステスト)を実施して診断します。
さらに詳しく検査する場合はMRI、CTを用いて検査します。
【治療】
サポーターや装具などで固定する方法があります。安静にする事で炎症を抑えるのが目的です。
当院では症状や生活スタイルに合わせて作業療法士が固定用の装具を製作します。必要であれば消炎鎮痛剤などの内服といった対処療法が行われます。
安静にしていても症状に変化がない場合や仕事や日常生活に支障が出てしまう場合は手術という選択肢もあります。手術可能な病院で院長が執刀しますのでご相談ください。
手首の付け根が痛い、腫れや熱を持っている
【症状・病態】
前腕(肘から手首までの部分)には2本の骨があり、そのうちの親指側の太い骨を橈骨といいます。この橈骨が手首の部分で折れることを橈骨遠位端骨折と呼びます。外力が加わった際に、手首に強い痛みや腫れ・変形などの症状がみられます。ときに、折れた骨や腫れによって神経が障害され、指に痺れが出たり感覚が鈍くなることもあります。
橈骨遠位端骨折は、怪我をした時の姿勢や折れた骨のズレる方向によって、コーレス型(折れた骨が手の甲側にズレた骨折)とスミス型(折れた骨が手の平側にズレた骨折)に大別されます。コーレス型は、橈骨遠位端骨折の中で最も多い骨折の種類です。また、橈骨遠位端骨折の合併症として手根管症候群・長母指伸筋腱断裂・複合性局所疼痛症候群(CRPS)などがあります。
【原因】
多くは骨粗しょう症を有する中高年者が、転倒して手をついた場合に起こります。骨粗しょう症の方は骨が脆くなっているため、簡単に折れてしまいます。若年者でも、高所からの転落や交通事故・スポーツ中の事故など、強い外力が生じると起きてしまいます。橈骨遠位端骨折は、骨折のなかで頻度の高いものの一つであり、脊椎圧迫骨折・上腕骨近位部骨折・大腿骨近位部骨折などの骨粗しょう症を基盤とする、高齢者四大骨折の中の一つです。
【検査】
骨折の存在はレントゲンで診断します。
さらに詳しく判断するには、CTやMRIを撮影することもあります。
【治療】
橈骨遠位端骨折では、骨折の安定性や年齢によって治療法の適応が異なります。
安定型骨折(ズレが少なく安定している場合)では、徒手整復やギプス固定などの保存療法が適応となります。不安定型骨折(骨折した骨が大きくズレている場合)では、プレート固定などの手術療法が適応となることがあります。また痛みが強い場合は、消炎鎮痛剤の内服などの対処療法が行われます。
親指を使うときに手首の親指側が痛い
【症状・病態】
親指側の手首に生じる腱鞘炎を「ドケルバン腱鞘炎」といいます。
手腕の使いすぎなどにより、腱鞘(腱を包んで守っているトンネル)に痛みや腫れが生じます。
物を掴んだり、タオルを絞るなどの動作で痛みが出る、手首の親指側が腫れて痛み、患部に熱を持っている、親指を広げたり握り込んだりすると突っ張って痛いなどの症状が生じます。
【原因】
仕事・スポーツでよく手首を使う方、妊婦出産期・更年期の女性に起こりやすいとされています。
(例)携帯・パソコンの片手操作または長時間の使用、テニス・ゴルフ等のスポーツ
自律神経が乱れてホルモンバランスが崩れることによって、血液の循環が悪くなり(鉄分の不足により)老廃物を体外に出せないことで、筋肉や腱に蓄積され腱鞘炎を引き起こしてしまいます。
【検査】
視診と触診で診断を行います。徒手検査をはじめ、腱の腫れを確認するための「超音波検査」等も検討されます。
【治療】
基本的には『保存療法』:固定器具での安静・レーザー治療(温熱療法)・服薬で対応します。
改善が見られない場合には腱鞘内への注射が選択される場合もあります。
数回の注射を行っても効き目がない場合、手術による治療が必要になります。
当院では手術から術後のリハビリテーションまで可能です。
手をついたときに手首の甲側が痛い
手指
箸が使いにくい、シャツのボタンをとめにくい
【症状・病態】
手を支配する神経は、正中神経・尺骨神経・橈骨神経の3本に分けられます。手根管症候群では、正中神経が手首の掌側にある手根管と呼ばれる骨性のトンネル部分で圧迫されることにより生じます。
症状は主に運動(指の動かしにくさ)と感覚(痛みやしびれ)の両方に生じます。
運動では特に親指の動きが悪くなり箸の使用やボタンかけなどの細かい作業が困難になると共に、親指の付け根の筋肉が痩せて”猿手”と呼ばれる変形をきたします。指でOKサインが作りにくくなるのが特徴です。
感覚では小指以外のしびれ・痛みを生じます。手首を振る事で症状が楽になる特徴があります。
【原因】
多くは原因不明と言われていますが、女性に多く発症します。
また、関節リウマチ、手首周囲の骨折、透析、指の腱鞘炎などの病気をもつ場合や、妊娠・閉経などの女性ホルモンの影響でも発症リスクが高まります。病気や体調の変化以外にも、単純に重労働で手を過度に使用しやすい方などにも発症しやすいと言われています。
【検査・診断】
診察、レントゲン検査、神経伝導速度検査にて評価します。必要に応じてCT・MRI検査が追加されることもあります。
【治療】
指の動きにくさや痛み・しびれや感覚の低下などの症状が軽症の場合、まず保存療法が選択されます。保存療法では手首の安静・手首の固定(装具を用います)・服薬・注射などの手段を用います。
症状が重症の場合は早い段階での手術が勧められています。
中指、人差し指がしびれて痛む、感覚が弱い
小指がしびれる、感覚が弱い(肘を曲げて手を使うときなど)
特に朝起きた時に指がカクンとひっかかる
【症状・病態】
指を曲げるとスムーズに伸ばせなくなり、曲がったまま固まります。力を入れてその指を伸ばそうとすると、カクッ!と一気に伸びた状態になります。この「曲げたばねが一気にまっすぐ伸びる」ような動きからばね指と呼ばれています。
指の手のひら側には指を曲げるための腱があり、腱鞘(けんしょう)というトンネルのようなものの中を通ることでスムーズな曲げ伸ばしができるようになっています。例えると「腱=ベルト」と「腱鞘=ベルト通し」のような関係と思っていただくとわかりやすいかもしれません。何らかの原因でこの腱や腱鞘に炎症が起き腫れてしまうと、腱と腱鞘の間に引っかかりが生じてばね指の症状が出てしまいます。
腱鞘炎の状態ですから、痛みや関節のこわばりも感じ、特に起床時に症状が強く出る方が多いのも特徴です。
【原因】
ばね指になる方の多くは、仕事や趣味での手指の使い過ぎが原因です。また、女性ホルモンのバランスが乱れる時期(妊娠中・出産後・更年期)にも発症しやすいといわれています。
糖尿病の方や人工透析を受けている方にも多くみられます。
【検査】
リウマチなど他の疾患と区別するためにレントゲン撮影をすることもあります。
【治療】
原因が手の使い過ぎでばね指になった方は、症状が落ち着くまで安静を保っていただきます。患部の炎症により起きた腫れを抑えるための漢方薬も効果的です。
痛みのない治療法として、当院ではレーザー治療を取り入れています。週に2~3回、患部にレーザーを当てることにより、血流が改善され炎症が抑えられるとされています。指が固まるのを防ぐために理学療法士によるリハビリをすることもあります。
漢方薬が苦手な方やレーザー治療に通えない方、さらに即効性のある治療を希望される方には、引っかかりが起こっている部分に炎症を抑える注射をします。この注射は、何度も同じ場所に打つと腱を弱くしてしまう可能性があるので、3回までを目処に行います。
それでも再発する場合は手術をお勧めしています。『腱鞘切開術』という手術で、当院で日帰り手術が可能です。
急に(朝起きた時など)に手首や指がのばせなくなった
【症状・病態】
上腕を通っている橈骨神経の麻痺により手首や指が垂れ下がった状態になり、伸ばすのが難しくなる疾患です。状態によっては指のみ伸ばせないこともあります。また親指~中指の手の甲側から前腕の親指側に痺れや感覚障害が起こります。
【原因】
上腕の骨折など外傷を伴う場合や、上腕部の長時間の神経圧迫が原因となります。
欧米では、恋人に腕枕をして眠ったときに、一時的に橈骨神経麻痺になりやすいことから、この症状のことを「Saturday night palsy(土曜の夜の麻痺)」ということもあります。
【検査】
エコーや筋力検査などを行います。
【治療】
交通事故や一時的な圧迫で発症した場合は自然に回復する場合が多いです。回復に時間のかかる方は装具療法や、ビタミン剤の投与などを行い神経の回復を狙った治療をする場合が多いです。装具は当院で簡易的に作成可能です。
3カ月以上続く場合は手術も考えられることもあります。
朝の手指のこわばり
【症状・病態】
自己免疫疾患の一つです。自分の身体の細胞の一部を自分のものではないとして、これに対する抗体を作って反応をおこしてしまい、関節内に存在する滑膜(かつまく)という組織に炎症が起きます。滑膜から産生される破壊物質が、次第に自分の軟骨や骨を破壊していく病気です。
全身の関節の炎症によって手や、肩、膝、足などの関節が腫れて痛みがでます。朝の手のこわばりや、指の第二関節や付け根、手首に痛みがでることが多いです。症状が進行すると関節の変形や破壊により、関節を思うように曲げ伸ばしできない等の症状がでます。
関節リウマチは早期の治療が重要となります。少しでも気になる症状がある方や血縁者にリウマチの方がいらっしゃる際はご相談ください。
【原因】
遺伝や環境、細菌・ウイルス感染によって自己免疫の異常が起こると考えられていますが、原因はよくわかっていません。
【検査】
レントゲン検査、エコー検査、血液検査を行います。
【治療】
抗リウマチ薬やステロイドの内服治療、生物学的製剤を使用した注射治療などがあります。
薬剤を使用することでリウマチによる炎症を抑え、関節を壊していくことを抑えていきます。腫れや痛みが強い場合は、症状がある部分にステロイド注射を打つこともあります。また、症状に合わせた漢方薬を処方することもあります。
運動療法や作業療法で症状を予防・改善していきます。
関節の変形が進行したり、日常生活でお困りの場合は手術になることもあります。
手指の関節の痛み、腫れ
親指の付け根が痛む
【症状・病態】
親指の付け根と手首の間にある関節を「母指CM関節」といいます。母指CM関節症は、その関節が腫れて痛みが出たり、変形したり、親指を動かしづらくなるといった症状が現れます。痛みを感じる動作としては、ビンの蓋を開ける・ドアノブを回す・タオルを絞る・ボタンをかける・ホチキスを使う・ハサミを使うなどがあります。
母指CM関節症の初期では、関節の中でクッションのような役割をする軟骨が擦り減り、滑膜の炎症や腫れが起こって痛みの原因となります。進行すると、軟骨を介さず骨と骨が直接当たってしまい、骨が棘のような形に変形していきます。さらに骨の変形が進むと、関節が不安定になり「亜脱臼」の状態になります。
【原因】
仕事や家事でよく手を使う方、手芸など手を使う趣味をお持ちの方は母指CM関節症になりやすいと言われています。また加齢やホルモンバランスの変化、過去に受けた母指や手首への外傷も原因になりえます。
【検査】
レントゲン検査で骨の状態を確認します。
【治療】
親指の動きを制限して安静にすることで炎症を抑え、痛みを軽減することができます。当院では、作業療法士がオーダーメイドで患者様の手指の形に合わせた固定装具を作成します。装具で安静を保ちつつ、痛み止め・炎症を抑える内服薬で経過をみます。それでも痛みが引かない場合は、母指CM関節に炎症を抑える薬を注射します。
長期間治療しても痛みが取れない場合や、痛みがひどく日常生活に支障がある場合は手術をお勧めします。患者様の状態・病状に合った手術方法を選択し、手術ができる提携病院で当院院長が執刀することも可能です。
手の甲の筋肉がやせてきた
手の指の関節が固くて動かない
指の爪が痛む(特に寒いとき)
リハビリテーション科
全身の痛みやしびれ、動かしづらさでお悩みの方に、理学療法士による運動療法と物理療法を組み合わせ、予防に力を入れたリハビリを行っていただきます。お一人お一人の症状に合わせて、医師とリハビリスタッフがリハビリプランをご提案し、症状改善に向けた体づくりをサポートいたします。まずはご相談ください。
骨粗しょう症
骨粗しょう症になると、尻餅をつく、手をつく、重いものを持つ、草抜きをするなどささいなきっかけで骨折してしまいます。進行すると子犬を抱っこしただけで背骨が折れたり、中にはきっかけさえ分からない「いつの間にか骨折」を起こす可能性もあります。当院ではDEXA法という正確な骨密度測定を行い診断し、治療をしています。
当院で行う手術について
手術が必要と診断し、患者様が手術を希望された場合には、当院または連携病院にて院長自らが手術を行います。
手術後も当院で治療やリハビリテーションを行っていただき、患者様が元気に回復していただけるまでサポートいたします。
当院での漢方薬治療について
当院では患者様の症状によっては漢方薬を処方しています。全疾患に対して処方をしているわけではありませんが、当院の大きな武器として有効活用しています。
改善が乏しい症状、筋肉が硬かったり攣りやすいなどの症状、体質改善を目的とする場合(冷え性やむくみ等)などに使用していきます。
漢方薬は副作用が少ないお薬ですので、慢性的に消炎鎮痛薬を内服し消化器症状がでている方や副作用が怖くてお薬を内服することに抵抗がある方、または妊娠・授乳中の患者様にも処方することができます。
漢方薬は1日3回内服の粉末タイプが多いですが、種類によっては1日2回内服や錠剤の漢方薬もあり、患者様のニーズに合わせた処方もできます。
下記の該当症状がある際はお気軽にご相談ください。
◇芍薬甘草湯
よく足が攣(つ)る、攣りを予防したい 筋肉を和らげたい
◇防已黄耆湯
膝に水が溜まっている
◇越婢加朮湯
膝に水が溜まっている 関節が痛く、赤く熱感がある
◇二朮湯
よく足が攣(つ)る、攣りを予防したい 筋肉を和らげたい
◇芍薬甘草湯
肩の関節が痛い
◇葛根湯
肩が凝っている
◇葛根加朮附湯
肩が凝っている 体が冷えている
◇五苓散
手の指を曲げるとひっかかる、浮腫んでいる 天気が悪いと頭痛がする
◇柴苓湯
手の指を曲げるとひっかかる 関節が腫れて痛い
◇牛車腎気丸
腰が痛い、下肢が痛い
◇八味地黄丸
腰が痛い、疲れやすい
◇よく苡仁
朝起きて足をつくときに足の裏が痛い
◇桂枝茯苓丸
指の関節が痛い
◇加味逍遙散
指の関節が痛い 更年期症状がある
◇桂枝加朮附湯
関節が痛く、冷えると悪化する
◇疎経活血湯
腰が痛い 冷えると痛みが増強する
◇治打撲一方
打撲して内出血がある
◇補中益気湯
食欲がない、夏バテする
◇人参養栄湯
食欲がない
◇半夏白朮天麻湯
めまいがする